個人年金保険のおすすめ・・・いいのが見当たらない理由

将来のための貯蓄をしながら保障もついている個人年金保険。

老後は公的年金だけでは心許ないから、他にも用意しておきたいというニーズは高く、人気のようです。

老後のためにお金を用意しておくことは多くの人にとって必要なことですが、私は個人年金保険はおすすめしません。その理由をまとめました。

 

個人年金保険とは?

個人年金保険は、老後のお金を民間の保険会社を通じて積み立てて、年をとったら年金形式でもらう保険商品です。

  • 支払った保険料を保険会社が運用し、契約時に決めた年齢になったら、その積立金を年金として受け取ることができます。
  • 年金を受け取り始める年齢や期間は、会社所定の範囲内で、例えば60才から15年間とか、65才から10年間などと決めることができます。
  • 年金を受け取る前に死亡すると、それまでに払い込んだ保険料に応じて、死亡給付金を受け取ることができます。
  • 払い込んだ保険料に応じて、1年あたり最高4万円までを「保険料控除」という経費扱いにすることができます。その場合、年末調整か確定申告で「最高4万円×所得税率」分だけ、税金が安くなります。
    (控除を受けるには、契約内容に一定の要件があります)

〈個人年金保険のイメージ図〉
保険料の払い込み:30才~60才の30年間、月1.5万円
年金の受取り:65才から10年間

 

保険と貯蓄は「目的」が違う

保険は本来、「いつ起きるかわからない」かつ、もし起きたら「自分ではとても賄えないお金が必要になる」事態に備える手段です。

万が一の時には助けてほしい!という人達が、少しずつお金を出し合って、保険という「みんなの貯金箱」にお金を貯めていくイメージです。

すごく困った事態が自分に起きるかどうかはわからないから、出すお金(保険料)は安い方が良いですよね。

その安いお金(保険料)が、いざという時には大きなお金(保険金)になって助けてくれるのが保険の役割です。

一方、貯蓄は自分のためにコツコツお金を積み立てるシンプルな行いですね。いくら積立ててもいいし、いつ何に使うのも自由です。

保険と貯蓄は、まったく別の方向性をもった商品なのです。

保険とセットにすることで、「貯蓄」部分は自由なお金ではなくなってしまいます。

お金が貯まる保険は、保険料を払い終える前に中途解約すると、元本割れするリスクを併せ持っているからです。

その場合は、お金が増えるどころか、積立てた額よりも少ない金額しか戻ってきません。

一旦契約すると、将来解約したくなった時でも、損するのが嫌だから解約できない「縛り」ができてしまいます。

契約者にとっては不利な状況といえますよね。

個人年金保険は、保険料を払い続ける期間が30年などと長期にわたるため、その間に絶対に解約しないという約束はしづらいと思うのです。背負うリスクは小さくありません。

それならば、保険+貯蓄にこだわらず、必要な保険は掛捨てでシンプルに(みんなの貯金箱に少しだけお金を入れる)、貯蓄は自分で好きなだけするのが断然分かりやすいと思います。

銀行の自動送金を利用すれば、決めたタイミングで自動的に貯蓄することもできます。

 

お金の価値はずっと同じではない

お金の価値は、時間と共に変化します。

モノやサービスの種類によって価格の上昇率はまちまちなので、お金の価値を単純に比較することは難しいのですが、ざっくり時代ごとの価格を見てみると・・・

項目 1980年 1990年 2000年
大卒の
初任給
11万円 17万円 19万円
民間家賃
(33㎡)
4.6万円 7.3万円 8.6万円
即席の
カップ麺
60円 76円 84円

総務省統計局「小売物価統計調査(動向編)調査結果」より

 

貨幣価値はずっと同じではないことがわかります。

今もらう10万円と、40年先にもらう10万円とでは、その価値が変わっている(その金額で買えるモノが違っている)可能性が高いといえますね。

お金の世界では「将来の価値は、額面よりも小さく評価する」のが基本的な考え方です。

 

「何十年も先の保険」は安心?

個人年金保険のメリットの一つに、預金よりも高い返戻率が謳われますが、ここは冷静に判断したいところです。

払った保険料よりも多くお金が戻ってくるという100%超えの返戻率ですが、何十年も先の将来に受け取るのであれば、その価値は額面よりも割り引いて考えるべきですね。

例えば、今の個人年金保険の返戻率は、高いところで106%程度です。
(円建て・2020年4月現在)

30才男性が、毎月1万5000円の保険料を30年間払い込んだ場合、額面で34万円増える計算になります。

保険料の総支払額 540万円
受け取る年金額 574万円
差額 +34万円

 

今から30年先の未来がどんな社会になっているのかを予測するのは難しいし、この契約内容が30年後の時代に合わなくなっている可能性も大きいでしょう。

加えて、この30年の間は、解約したらいつでもマイナス(元本割れ)という条件もついてきます。

30年間で+34万円は素直に喜ぶ価値があるかどうかは、冷静に考えたいです。

「預金よりも増える」決め文句の陰に潜むリスクは、小さくないと感じます。

 

外貨建ての保険はよりリスク大

外貨建ての個人年金保険は、円建てよりもさらに返戻率が高く、預金と比べてこんなにお得です!と比較されることがありますが、外貨建ての商品には為替リスクも上乗せされます。

 

保険料を支払う時

保険料は外貨建てで「月額170ドル」のように表示されますが、日本での支払いは、その時の為替レートで換算した「円」で行います。

支払う保険料は為替の影響を受け、円安*になると保険料が高くなります。

*1ドル80円だったものが、1ドル100円に変動するような場合

 

年金を受け取る時

高い利率で、外貨ベースでは年金額が増えたとしても、日本で年金を受け取る時には円に換金しなければなりません。

その際、円高*になってしまうと受取額は目減りします。

*1ドル100円だったものが、1ドル80円に変動するような場合

 

為替レートが不利

保険料の支払いや年金受取り時の換算レートは、保険会社所定のレートが適用されます。

手数料分が上乗せされていると理解しましょう。

為替の変動はコントロールできないし、金額に及ぼす影響が大きいのが特徴です。

できるだけリスクを取らずにお金を増やそうと考えるなら、外貨預金や外貨建て保険は、リスク・コストともに高く向いていません

 

若い人ほど、将来の公的年金に対する不安が大きく、早くから個人年金保険を検討する人も多いと聞きます。

公的年金が心配だとしても、個人年金保険を選ぶべきかどうかは、よくよく検討することを「お願い」します。あなたの限りある時間を有効に使うために。